先日、一風変わった旅好きの男と知り合った。
その男の旅はロンドンやバルセロナなどのメジャー都市に行くミーハーなものではなく、秘境マニアでもなく、旅情報サイトやガイド本を参考にするのでもなく、世界を旅する外人インスタグラマーが発見したあまり知られていない土地に訪れるという趣向で、インド洋に面した何とかという町とか、クロアチアのザグレブからほど近い何とかという町とか、カナダ沖の島の何とかという町とか、名前も聞いたことがない土地のインスタ写真を見せてもらった。
ガイド本やGoogle程度の情報では飽き足らない好奇心と特異な臭覚を持ったインフルエンサーなる人が見知らぬ土地に行って、何かを発見してはSNSで小さな流行を起こし、その人を「旅の神」と崇める信者が聖地巡礼的に現地に赴くというのは、とても今っぽいなと思いつつ話を聞いていると、その男は、「旅の神」のフォロワー群であることに満足せず、あわよくば一次情報の人、「旅の神」の立場になるという野望があると語った。
想像するに、一次情報の立場になってGoogleに新たな旅カタログの1ページを加えたい欲求を持つその男のような旅人は世界中にそこそこ存在するだろうし(知らんけど)、その類いの人たちが、「旅の神」(=旅インフルエンサー)になる手助けを商売に出来ないかと、少し考えてみた。
その類の人たちに面白い何かを発見する嗅覚があるかどうかは別として、まず、彼らはどこに行けばいいのか?
その男は仕事があり、世界中を時間を気にせず放浪することはできないし、仕事を辞めてまですることではないと考えている。よって、何かがありそうな予感がするが、世界には知られていない土地に短期間で行かなければならず、こちらとしてはピンポイントでそれらしき土地に案内しなければならない。
言い換えると「何があるかわからないけど、何かあるかも知れない旅(結局何もないかもしれないので、その時はゴメンなさい)」の案内である。我ながら、書いていて訳が分からなくなって来たが、続けます。
地名で選ぶ、何があるかわからないけど、何かあるかも知れない旅
「何があるかわからないけど、何かあるかも知れない旅」を可能にする土地とはどこなのか?
本来の旅の案内業者は事前にその地を訪れ、「この町は○○と△△が見所ですよ」と旅人に提案するのが筋なのだが、これはあくまでも行った人が独自の視点で見所や楽しみ方を発見することで、その人たちの自己顕示欲を満たすというアイデアであり、極論、世界中、人が行ける場所であればどこでもいいのである。
但し、海外に旅に出るには貴重な休暇をとって、それ相応のお金が必要になる。例えば、気まぐれネコに地図上を歩かせて、粗相をした場所を案内するような「ダーツの旅」的サービスでもいいのだが、そんな動物任せのサービスでは「ふざけるな」となるな…。
猫の顔を思い浮かべつつ思いを巡らせていると、旅のコーディネーターの仕事から旅の体験の提案を削ぎ落とすと「地名」しか残らないぞ、というお告げが降りてきた。
「地名」は旅の本質とは全く関係ない。しかし、地名の響きによって生まれる淡い期待感はある、いや、あってくれ…という願いと共に地名を突破口にする旅について考えてみた。
調べてみると、世界には「悲しい地名」「怖い地名」「エロい地名」など、知られてはいないが、耳を疑うようなとんでもない地名がたくさんある。名前が風変わりなだけで、実際そこに何があるかは知られていない。あるのは響きと単語としての意味だけなのだが、何か魅惑的だ。例えば…
●悲しい地名:
Poverty Island(ミシガン州)、Depressed Lake(カリフォルニア州)、Doubtful Island(豪州)、Miserable Island(マサチューセッツ州)、Broken Heart Ln(テキサス州)
➡自殺の名所かと思うような名前である。
●怖い地名:
Slaughter Beach(デラウェア州)、Death Rd(モンタナ州)、Tragedy Pool(豪州)
➡夜の外出はしづらいが、肝試しに行く気持ちで思い切って、町をうろうろしてみたくなる名前である。
●エロい地名:
Dildo(カナダ)、Fucking(オーストリア)、Petting(ドイツ)、Tit(アルジェリア)、Penistone(英国)、Big Dick Lake/Little Dick Lake(ミネソタ州)
➡ディズニーランドよりワクワクしてくる。そわそわして夜は眠れなさそうな名前である。
※エロい地名となると日本でも放出(大阪)、女体入口(長野)、朝立(愛媛)など数多く存在するが、ここでは一旦海外旅行ということに限定する。
例えば、こんな感じで、イギリスのCock Bridge~Gay Village~Anus~Cunty〜Pussy〜Bitche〜FuckingからスウェーデンのAssholmenへと続く、欧州V字縦断エロい地名を辿るロードトリップなんかも組める可能性はある。こうやって眺めてみると、何か起こりそうな臭いはプンプンする。このサービスで一番大切なのは「期待感」なのだ。
「非常にオカルト的な話だが…Cock Bridgeに行くと、朝が元気すぎる状態に。年配の自信を無くした男が訪れるといいかも知れない」
「Anusにある通称”肛門トンネル”と呼ばれる洞窟の奥には透き通るような真っ青な世界が広がっていて…」
「Cuntyは、なんか臭い。ずっと臭かったが…嫌いにはなれない」
「Bitcheの女は実は全然Bitchじゃない。ステキな女ばかりの町。出会いを求めるならここに行くしかない」
「Assholmenには、世界最大の108股かけた伝説の男がいたとかいないとか」
何を発見できるかはその人の能力と運次第だし、何もない可能性もあるが、こんなストーリーをSNSに投稿できれば、世界中の旅人がフォロワーとなり、あなたは「地名の旅の開拓者」として「旅の神」になれるかもしれない。
最低でも地名看板前での写真撮影によるインスタ映えは保証されている。ユニークな地名にまつわる歴史的な物語もあるかも知れない。
提供側としては、それぞれの地に旅人が何度か訪れ、情報がトリップアドバイザーに集積されるようなことがあれば、このプロジェクトは成果があったとなるだろう。
「無名の町の部屋」(民泊)ネットワーク
この考え方を商売にする方法について考えてみた。
本当は各地に「無名の町ホテル」をチェーン展開したい所だが、こんなリスクにまみれたプロジェクトに投資する資本が地球上にあるはずがないので、各地の家と提携して、「無名の町の部屋」(民泊)をネットワークすることにした。従来の旅の価値観ではAirbnbに掲出しても選択されづらいけど、「地名」でカテゴライズすれば新たな需要が生まれる可能性がある(知らんけど)。後は、図々しいアイデアついでにTシャツなどのグッズ展開など。時々ホテルが自社ブランド名をプリントしたグッズを販売しているけど、無名の町Tシャツやグッズは、意外と秘められた価値があるのではないかと想像している。
「無名の町の部屋」(民泊)を展開する地域の選定にあたっては、「地名」が一番重要なのだが、二番目の基準として、万が一、魅力発見ゼロの場合に備えて、それなりの観光地に近い場所がいいと思っている。
ロンドンに近い、パリに近い…であれば、帰り道にメジャーシティで無念をはらすことで、許してもらえるだろう。逆にロンドンに行くついで、パリに行くついでに無名の町に立ち寄ってもらえれば幸いである。
以上、支離滅裂でまだまだ思いつきレベルですが、万が一、興味あるという方がいらっしゃいましたら、アドバイスお願いします。このサービスのモデルになった男には機会があれば一度相談してみます。